機関による意思決定
個人事業の場合、どんな経営上の意思決定でも、事業主が自分1人の判断で行うことができます。
法人になるとそうはいきません。経営上の重要な事項に関しては、会社の機関であある株主総会の決議や取締役会の決議といった手続きが必要になるのです。
株式会社は、株主が会社の経営を取締役に委託して、取締役が会社を運営します。取締役は、日常の取引については自らの判断で遂行することができます。ただし、重要な業務の決定については、取締役会での決議が必要です。
そして、会社全体に影響を及ぼすような、さらに重要な意思決定については、株主総会の決議が必要になります。
このように株式会社は、最高意思決定機関が株主総会であり、その下に日常的な意思決定の期間として取締役会があります。取締役は、取締役会の意思決定に基づいて、業務を執行するという形になっています。
取締役会の決議事項
そこで、まず取締役会で決めなければならないことを整理してみましょう。
これには、
1 重要な財産の処分および譲り受け
2 多額の借財
3 重要な使用人の選任および解任
4 支店などの重要な組織の設置・変更および廃止
などといった事項があります。
なお、これらの事項の決議には、取締役の過半数が出席して、過半数の賛成が必要となります。
株主総会の決議事項
次に、株主総会で決めなければならないことですが、株主総会の決議には、株主の過半数が出席して過半数の賛成で可決する「普通決議」と、過半数の株主が出席して3分の2以上の賛成で可決する「特別決議」があります。
普通決議で決める事項と、特別決議で決める事項には次のようなものがあります。
普通決議で決める事項
・取締役、監査役の選任
・取締役の解任
・決算の承認
・剰余金の配当など
特別決議で決める事項
・自己株式取得の決議
・役員等の責任の一部免除
・資本金の減少
・定款の変更
・会社の解散、精算
・組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転
・監査役の解任など
なお、株式の譲渡制限会社は、取締役会を設置しないこともできますが、株主の権限が限りなく強くなります。取締役会を設置しない場合には、業務上の個々の問題や会社の組織運営など、経営上のあらゆる重要事項がすべて株主総会での決議によって決まることになるからです。
このように、個人事業では自分1人の判断で決定していたことが、法人化した場合には取締役会や株主総会での決議という手続きが必要になります。