法人化、法人成りで引継ぐ資産
個人事業から引き継ぐ資産
個人事業を法人化することは、個人事業をそのまま法人に引き継いで営業することです。したがって、法人に移行した後も営業に支障のないように、引き継ぐ事項を決めておくことが肝要です。引継ぎを検討しなければならない事項には次のようなものがあります。
現金・預金(預金口座の開設)
個人事業用の現金は、そのまま法人へ引継ぎ事ができます。
預金については、個人事業で使用していた個人名義の口座から引き出し、法人名義の口座に入金して引き継ぐことになります。
法人の設立登記が完了し、「登記事項証明書(登記穂謄本)」と法人の「印鑑証明書」が揃ったら、法人名義の銀行口座を開設することができます。
銀行借入金
個人事業で借り入れた銀行借入金がある場合、個人から法人への名義変更手続きで移すことも可能です。ただし、そのときの事業の状態と、銀行の判断しだいでは、名義変更ができないケースもあります。個人事業の借入金を法人名義に変更可能かどうか、取引銀行で事前に確認することが必要です。
売掛金・買掛金
個人事業で生じた売掛金(掛売りの未収代金)や買掛金(仕入れ代金や外注費等の未払い金)は、法人に引き継がないで、個人で打金を回収したり、支払ったりするのが通常です。
パソコン等の備品類や商品在庫
パソコン等の備品類や商品在庫などは、法人を設立するときに、金銭で出資する代わりに現物で出資する「現物出資」という形で法人に引き継ぐのが一つの方法です。あるいは、法人設立後に法人が個人からこれらの備品や商品を買取ることもできます。
いずれの方法にしても、そのときの時価で現物出資したり、買い取りをしたりする必要があるでしょう。この場合の時価とは、パソコンや車輌であれば中古価格、商品在庫であればその時点での同一商品の購入価格のことです。
なお、現物出資でも設立後の買取りでも、個人事業者からすれば資産の譲渡になります。つまり、備品や車両については個人の譲渡所得になり、商品在庫については個人事業の最後の売上となります。個人事業者が消費税の納税義務者である場合には、消費税もかかってきます。
事務所・店舗・建物
個人事業で借りていた事務所や店舗・建物を引き続き使用する場合、その「賃貸借契約書」の名義人を個人から法人に変更する必要があります。大家さんからの名義変更の了解を得ている場合は「登記事項証明書」を提示して名義の変更の手続きを行ないます。この場合、保証金については契約切り替え時に個人から法人に引き継ぐ必要があります。
また、賃貸借契約を切り替えなくても、個人で借りた物件を法人に又貸しする形をとることも可能です。この場合には、個人と法人とで新たに賃貸借契約を締結する必要があります。
リース契約
コピー機などのリース会社が、個人から法人への名義変更を許可するのであれば、名義変更の手続きを行ないますが、可能かどうかは、リース会社しだいです。
名義変更ができない場合は、リース契約は個人の名義のままで、法人がそのリース料を負担する形にすればよいでしょう。
個人所有の事業用の不動産
個人が所有している事業用の不動産に関しては、現物出資や設立後の買収により、法人に移行することも可能です。
ただし、税金の金額が大きくなるので、一般的には個人所有のままで法人に賃貸するパターンが多いといえます。この場合には、個人と法人とで不動産の賃貸借契約を締結し、個人は確定申告で不動産所得の申告をすることになります。